学長メッセージ
令和6年度 入学式 告辞
本日、入学された学部および大学院のみなさん、ご入学おめでとうございます。宮城教育大学は、みなさんを心から歓迎いたします。
宮城教育大学は、1965年に東北大学から分離独立し、60年近い歴史を持つ、教員養成を目的とした教育大学です。その60年近い歴史の中で、東北地方を中心として、数多くの優秀な学校教員を輩出してきています。これまでに、学部生および大学院生を合わせて、2万2千名を超える卒業生を送り出してきています。
本日は、屋外では桜が近々満開を迎えようとしています。「桜咲く」この時期に際して、今、みなさんはどのようなお気持ちでしょうか。おそらく、これからの新しい生活に向けて、少し不安な気持ちを持ちながらも、なんとなく希望に満ちたワクワクした気持ちを抱いていらっしゃるのではないかと思います。これからの学生生活において、満開の桜を眺めた時には、常に今の希望に満ちたワクワクした気持ちを思い出してください。
大学というところは、教えられるのを待つという学びの場ではなく、自ら主体的に学ぶ場であり、さらに学び続ける姿勢を培う場です。現代の社会では、課題が多様化?複雑化しており、明確な答えのないような課題が多くなってきています。われわれは、こうした社会的な課題に対しても、正面から向き合っていくことが求められています。その際に、人類が永きにわたって築きあげてきた学問や芸術をじっくりと学びとってください。何かを探究し、創造するという営みには、時間的にも、精神的にも「ゆとり」が必要だと思います。また、多様な他者と関わりながら、共に考え、共に語り、共に創造するという「学び合い」を大切にしてください。みなさんが入学される宮城教育大学は、小さな大学であるというメリットを生かして、学生と教職員、先輩と後輩との距離がとても近いという特徴を持っており、「学び合う」にはとても恵まれた環境にある大学だと言えます。どうぞ、自分から進んで学びとって行ってください。
さて、突然ですが、今年の7月から、1万円札が新しくなりますが、その新しい1万円札に誰が登場するのか、みなさんはご存じでしょうか。渋沢栄一という名前を聞いたことはありますでしょうか。3年前のNHKの大河ドラマ「青天を衝け」の主人公として取り上げられた人物ですので、知っている人も多いかと思います。渋沢栄一は、日本における資本主義の父と言われている人で、幕末から明治時代?大正時代にかけて活躍し、90年間の生涯において、500を越える企業の設立や、数多くの社会公共事業に携わってきた人物です。その90年の人生は決して平坦なものではありませんでした。しかしながら、その90年間、渋沢栄一は常に「志」を持って生涯を送り続けました。そして、その「志」の中に、自分個人だけではなく、社会全体すなわち「公共」や「公益」といった視点を持ち続けていました。すなわち、みんなが喜ぶ、みんなにとってより良い「社会」を創りたいという願いを持ち続けて生きた人物でした。
こうしたより良い社会の創造ということに、密接にかかわった職業として、実は「学校の教師」という職業があります。学校の教師は、次の世代を支える人材を育てる存在であり、“次の時代を創る”ことができる素晴らしい職業です。医師が人の命を助けるように、教師は子どもの人生を支える存在です。そういう意味では、極めて責任の重い立場と言えますが、大変やり甲斐のある仕事であるとも言えます。
こうした学校の教師に求められる資質?能力としては、ひとつには、「豊かな人間性」です。また、社会の変化に伴う新たな課題に柔軟に対応できる「広い視野」と「豊かな教養」です。さらに重要なことは、「学びに対する真摯な姿勢」と「確かな実践的指導力」です。
今日の教育においては、“教える”という時代から、子どもたちが“自ら学ぶ”ように導く時代、つまり“アクティブ?ラーニング”への転換が求められています。そのためには、みなさん自身に、“自ら学ぼうとする姿勢”と、“自ら学ぶことのできる力”が備わっていなければなりません。是非とも、学問や芸術と正面から向き合ってみてください。
決して焦る必要はありません。膝に少しゆとりを持たせながら、どうか尊敬される優秀な教師となれるよう、本学での充実した学生生活を送ってください。
みなさまの実り多き前途を祝して、告辞といたします。
令和6年4月3日
国立大学法人宮城教育大学長 松岡尚敏